PT以降のバントカンパニーについて語る
2016年8月16日 Magic: The Gathering コメント (2)FNM数回~ゲームデーで調整&使用してみての感想的なものを語るで~
【バントカンパニーの現在のメタゲームにおける位置】
非常に良い。
他の中速デッキがエムラクールを巡る攻防にデッキの枠を割かざるを得ない中、ナチュラルにビートダウンとして振舞えるバントはエムラデッキ全般に悪くない戦いが出来るからだ。PTで登場したRGランプや各種現出デッキに対してCFBが持ち込んだバントが一定の対策方法を示してしまったこともそれを支えている。
バントに勝とうとする黒コンはRGに圧倒的不利を強いられるしそのRGはUG現出系のデッキに苦戦するといったように、環境の多くのデッキには大きく苦手とするデッキが存在する。それにどうしてもエムラや現出デッキ同士の対戦はマナ加速と大型生物をいかに綺麗に引けるかの運ゲー先手ゲーになりがちだ。無論バントにも苦手なデッキも存在するが、メイン絶望レベルというような相性差のマッチがあるわけではなく、事前に意識してデッキを組めばトータル五分五分には持っていける場合がほとんど。
要はバント>アンチバント>アンチバントアンチ>バントという構図のメタゲームは一見極めて健全に見えるが、実のところバントだけが不利な度合いが小さいという不平等な3すくみなのだ。PT以降のGPでバントの入賞数が圧倒的に多いのは多くのプレイヤーがエムラ合戦を避けてバントを選択しているためと考えられる。それにミラーマッチに構築とプレイ技術の差が出やすいため腕に覚えのあるプレイヤーはなおさらバントを選択しやすい傾向にあるように思う。
(ついでに言うと先週末は赤青バーンというエムラデッキと低速コントロール絶対殺すマンが大流行したこともバントの躍進に繋がった可能性は高い。個人的にはバントは赤青には普通に有利な印象だ。)
【デッキ構成について】
①クリーチャー群
・《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter(SOI)》
《呪文捕らえ》の加入で3/3としての運用しやすさが増した。ただ中~低速デッキがイシュカナ等で早めに蓋をしにくるようになったため能力を使う機会は減。とはいえ他にシングルシンボル2マナでタフ2の優良生物はほぼ存在せず概ね4確枠だ。
・《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》
強さは環境のリリアナの数に大きく左右される。逆に非黒に対しては何枚引いても困らない強さ。
RGや《コジレックの帰還》のみをタッチした現出系デッキがTier1である以上メインサイド合わせて4枚採るべきだと考えてはいるが、サイドプランによってはあまり採用しない人もいるのは分からんでもない。
・《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》
なんやかんやで安定の高カードパワー。プレイスキルに自信がありロングゲーム向けのサイドチェンジを行うことが多いとなお強い。
逆に《無私の霊魂》を4枚採ってアグロに攻めるプランをメインに据えるとなるとジェイスを100%生かせているかは怪しいが、タフ2の2マナ域が《首絞め》くらいしか他にいないのでジェイス2枚程度の採用も已む無しかと思っている。メインとサイドに何枚ずつ入れるかはメタと好み。0~4までどれもあり得る。
・《首絞め/Noose Constrictor(EMN)》
サイドボード後にアグロ路線を強めるならリリアナデッキに対しサイドアウトしなくてもよいのはかなりの利点。環境初期はスピリットデッキが居たので強かった「到達」はもはや影が薄いのが少々残念だが。
ゆーて弱くも強くもなく、2枚以上の採用はあまりお勧めしない。
(なお自分のデッキには2枚入っている)
・《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist(SOI)》
《跳ねる混成体》を採用するならメイン採用も考えられるかな、くらい。
アグロに対するサイドとして《節くれ木のドライアド》とどちらを積むべきかは分からない。
都合よく盤面が止まったときは平和主義者のほうが強いがドライアドにもドロコマが効かないことやタップイン土地ハンドKPを肯定しやすいといった利点もある。(自分は首絞めを入れたのでどちらも非採用だったが)
・《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》
意外かもしれないがここはメインに鉄板4枚枠ではないと思っている。実はこのカードはバントのミラーマッチでは影が薄い。こいつが一生死なない展開は土地事故以外9割がた起こりえないしアヴァシンでしゃくられやすいのが地味に良くない。サイドに《悲劇的な傲慢》を採ると相性が悪いのにも注意。
とはいえ飛行クロックとしてだけでもそこそこ優秀な上、非黒の中低速デッキに対し《無私の霊魂》との組み合わせは強すぎる。サイド合わせれば結局フル投入するべきカード。
・《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》
最近はバントミラー以外ではアドバンテージよりクロックの速さを要求されるマッチも多く、メタ読みいかんでメイン採用数を減らするのは妥当。それでもこのカードはメタとか相性とかそういうすべてを超越した化け物カードなのでメインサイド合計は必ず4枚。いいか、必ず4枚だぞ。
・《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》
サイド合わせて2枚は確定でいい。欲を言えば3枚目も欲しい。
27枚目の土地があったほうがいいんじゃないのかってくらいバントCCはフラッドに強くスクリューに弱い。とはいえ実際土地を増やすわけにもいかないので中隊カウント減らないマナソースは最強。ついでにPWも付いてくるなんて頭おかしい。
・《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer(OGW)》
同系で強い。無限反射で簡単に勝てるのは勿論、相手の無私の霊魂+アヴァシン爆発コンボを押さえ込むこともできる。
ただ今環境のバントはアンタップインランドの枚数確保が重要だと思っているので運用するには少々マナベースが厳しい。また真価を発揮するには◇マナ源を2つ引く必要があるが、その難易度が少々高いとも感じたので自分は不採用に落ち着いた。(ロングゲームを志向すれば自然と◇マナは揃うがそれならそれで《悲劇的な傲慢》を採用するプランのほうが丸いかと思う。)
・《異端聖戦士、サリア/Thalia, Heretic Cathar(EMN)》
イマイチ何にどう強いのか分からないので不採用。このカードが強いときはそれが他のカードでも概ね優勢な場合が多い。コンバットを適切にプレイできれば最終的には普通のバントには不要になるカードと思っている。《コジレックの帰還》《焦熱の衝動》で100%死ぬのもよくない。
除去が少なめでイシュカナやアヴァシンを叩きつけてくるデッキが流行ることになれば採用を検討することはありそうだが白緑が激減した今はあえて採用する理由は弱い。
・《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》
マナベースに負担をかけるが2枚程度なら白マナ15でも採用できると感じている。
3枚目を入れるなら白マナは16欲しいかな。
オジュコマがそこまで採用されない&呪文捕らえを巡る攻防で強く、先週末の時点ではミラーではアヴァシン無双がかなり発生しやすかった。
黒コンには弱いが、PT以降白黒コンにアヴァシンが入ったため異界月以前よりは弱くなくなっている。対黒緑にも基本的にはイマイチではあるがメインに《衰滅》採用数が少ない昂揚型に対してはまずまず活躍できるし(それでも大体サイドで抜くけど)、現出系デッキにもまぁまぁ強い。
・《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》
アヴァシンとは若干違って同系でいつプレイしても強いわけではないものの、自分と相手が同数、3~5体くらいの生物をコントロールしている状況でワンパンで10点以上持ってくのでゲームプランが作りやすい。
RGやジャンドに対してコジリタ(裏)が放たれるであろう重要なターンを縛るだけで勝ててしまうし、エムラデッキにも明確に強く黒コンに対しても《殺害》以外ではインスタントで除去されずアヴァシンよりは概ね強い。
問題点は負けている盤面で引いた時何もしない場合が多々あること。それに青青が普通の構成だと出づらい。今のところアヴァシンのほうが好みなので入れるならサイドに1枚としたい。
②スペル
・《ドロモカの命令/Dromoka’s Command(DTK)》
このカードの枚数は決して固定ではない。というのもバント同系、黒コン、GB昂揚、UG現出系、RG昂揚と上位メタに対してドロコマがイマイチなシーンも多いためだ。
もちろん赤青バーンや白単など劇的に輝くマッチがある上に他のほとんどのマッチアップでも腐ることはほぼない。それでもやはりPT以前に比べて生物依存度が低いデッキや除去コンの総数は増えている。同系でも展開次第では有効な打ち所が少なくなりがちなドロコマは常にデッキに入れておきたいカードではない。
メインサイドに入れる枚数はきちんと考えを持って決めたい。GPリミニではポールリーツェルがメインドロコマ0のリストでTop8に入賞しているし、LSVもPTレポートの中で同じくドロコマ0のバントアップデート版について触れている。
・《オジュタイの命令/Ojutai’s Command(DTK)》
逆にこちらはPT以前より価値が上がった。イシュカナやアヴァシンといったデッキの天敵5マナ生物に強い。それに《老いたる深海鬼》や《約束された終末、エムラクール》も本体を打ち消すだけで大分被害は違ってくる。《無私の霊魂》を釣れるおかげで現出+コジリタを実質まとめて打ち消せる可能性があるのも素晴らしい。
昂揚系とランプに対しては文句無く強いが、白黒や黒緑コンに対しては先手キレカリタスに対応できないのには少し注意。後手でも入れっぱなしにするかは相手の構成を見ながら。
③サイドカード
定番カードに触れる必要はないと思うのでPT以降で評価が変わったカードを中心に少しだけ。サイドカードというカテゴリーだがメインに入りうるカードも多い。
・《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》
利点
色拘束緩くプレイしやすい
瞬発力がある
(トップデッキすると強い。にらみ合いから早く勝ちやすい)
押されている場でも多少場持ちする
(生物を採用しているミッドレンジ相手に裏目が少ない)
欠点
単体で何もしないことが多く平場に出ても効果が薄い
(衰滅に対して先手後手で効果が違いすぎる)
エムラに弱い(ギデオンなら勝てたのにぐぬぬって場合がある)
PT以前なら全般的にギデオンのが強かったと思うが、イシュカナ、カリタス、リンヴァーラといった中~大型生物が復権してきた現在では裏目が少ないのはタミヨウのほうだと思う。今のところ白黒コンや生物少な目の衰滅GBxコンなんかにはギデオンのほうが強く、《森の代言者》を採用するタイプのコントロール寄りミッドレンジ(GB/RG系)にはタミヨウのほうが強いという評価。
・《意思の激突/Clash of Wills(ORI)》
PTでチャネル勢が使ったバントに搭載されたのがバントCCで使われたのは初だろう。黒緑昂揚など他のトッププロが持ち込むデッキを知っていたからとはいえ、このカードをPTの時点できっちり採用していたのには感銘を受けた。
異界月以前は白緑に強い《否認》を厚く採る必要があったし生物で蓋をしてくる中速デッキもあまり存在しなかったためこんなカードを採用する必要はなかった。しかしPTを経て《衰滅》《悲劇的な傲慢》等の呪文とカリタスイシュカナアヴァシンといった生物を両面ケアできるカウンターの価値は飛躍的に上昇した。オジュコマのところで書いたようにタコとエムラ本体を打ち消せるのも大事。
それに赤緑ランプが直接のマナ加速を減らし昂揚のサポートカードを増やしたのもこのカードにとっては追い風になっている。キーカードを打ち消すためのXが重すぎて構えられないということは少なくなった。ロングゲームになれば腐るのは事実だが、それでも現環境ではこのカードのメリットのほうが大きいはず。
個人的に大好きなのでゲームデーでは3枚積んでいた。メタゲーム次第では4枚採用もあり得なくはないと思うくらい気に入っている。
・《即時却下/Summary Dismissal(EMN)》
逆にあまりこのカードは好きではない。ジェイス4枚やタコを採用するような青マナ源15~16のマナベースならともかく、平均的なバントのマナベース(青14)でこのカードを確実にプレイできるのは6T目以降でありエムラはともかく《老いたる深海鬼》に対して間に合う保証がない。
それに、現出生物(+コジリタ)に対してはなるべく現出の種を潰すことと、霊魂やオジュコマ意思の激突などを使うことで被害を抑えるプレイを心がければ対処できないことはない。エムラに対してはプレイされても追加ターンで殺しきれるアグロなゲーム展開を意識する。
コジレックリターンがあまりにも環境に溢れるとなれば4枚の無私の霊魂では足りなくなるだろうからそのときはマナベースの見直しとともに採用を検討することになるとは思う。
・《否認/Negate(OGW)》
もはや不要説あり。白黒や赤緑ランプには相変わらず強いものの相手側が生物をたくさん採用していたりすると裏目を引くことがある。白緑はほぼ居ない上にPWには飛行戦力で対処できないことはないため絶対に否認が必要なマッチアップは少ない。
・《石の宣告/Declaration in Stone(SOI)》
定番カードではあるが白単以外に積極的にサイドインしたいマッチアップがなくなったので抜いてしまった。なんやかんやでアグロ系ローグデッキ相手に安心感はあるので採用したい気持ちはあるが。
・《支配の天使/Subjugator Angel(EMN)》
これもチャネル発祥。目指すところが簡単なのが最高。
ただこれを使うプラン自体が《悲劇的な傲慢》や《老いたる深海鬼》に少々弱いという欠点もあり文句無く同系最強カードというわけではない。
これは想像なのだが、LSV達はPTの時点では自分達以外に勝ち上がってくるバントの数は少ないと読んでいたのではなかろうか。つまりあまり同系にサイドスロットは割きたくないという前提の下1枚で劇的な効果を得られるカードがこれだったから採用されていたのでは。今ならタコのほうが丸いと思う。
・《過去に学ぶ/Learn from the Past(DTK)》
スタンダートほぼ唯一の現実的な墓地対策だが費用対効果はイマイチな上そもそもイシュカナや現出生物のプレイ自体には何も関与しないため裏目が大きすぎる。ぶっちゃけ弱い。使わんほうがいい。
・《神聖なる月光/Hallowed Moonlight(ORI)》
同系対策としては機能しない。
カンパニーはほぼメインで打つしそうそう2マナ構えてられん。
《秘蔵の縫合体》デッキに劇的に刺さることはあるだろうが(縫合体を場に戻すのはマスト能力なので)、縫合体ギミックにバントはそこまで相性が悪いわけではないし、そもそも縫合体現出系デッキはそうそういつも綺麗に回るデッキじゃない。(なので自分では《秘蔵の縫合体》デッキは使いたくない。)
【一応レシピ】
・バントカンパニー(ゲームデー通算戦績10-2-1ID)
4《進化する未開地/Evolving Wilds(BFZ)》
4《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast(ORI)》
2《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》
3《大草原の川/Prairie Stream(BFZ)》
1《梢の眺望/Canopy Vista(BFZ)》
2《要塞化した村/Fortified Village(SOI)》
6《平地/Plains》
1《島/Island》
3《森/Forest》
(白16青14緑16)
4《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter(SOI)》
4《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》
2《首絞め/Noose Constrictor(EMN)》
3《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》
3《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》
4《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》
4《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》
1《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》
2《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》
4《集合した中隊/Collected Company(DTK)》
3《ドロモカの命令/Dromoka’s Command(DTK)》
Side
2《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》→1枚タコ?
1《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》
2《オジュタイの命令/Ojutai’s Command(DTK)》
3《意思の激突/Clash of Wills(ORI)》
1《否認/Negate(OGW)》→意思の激突かタミヨウにしそう
1《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》
1《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》
1《ドロモカの命令/Dromoka’s Command(DTK)》
1《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》
2《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》
初日と二日目で細かく1~2枚変えてたが概ねこんな感じ。二日目はコントロール環境と事前に分かってたからメインのドロコマとアヴァシンを1枚ずつ《意思の激突》とオジュコマに差し替えとかしてもよかったかな。
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だがしかし、ここに書いてあることは先週末までの話。
今週末行われるRPTQでは恐らく再びのバントの海が予想されるため、また先週までとは違った構築が要求されるのは間違いない。出場されるみなさんの構築テクに期待。
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一応プレイマットと《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope(EMN)》の買い手は募集継続中。ただし異界月優勝マットはすでに売れました。
http://mizutamari2megusuri.diarynote.jp/201608152007371813/
リリアナ本体は誰か買ってくれないかな~?
町まで行けばショップがほぼ同額買取してくれるけど行くのめんどくさいのねん
【バントカンパニーの現在のメタゲームにおける位置】
非常に良い。
他の中速デッキがエムラクールを巡る攻防にデッキの枠を割かざるを得ない中、ナチュラルにビートダウンとして振舞えるバントはエムラデッキ全般に悪くない戦いが出来るからだ。PTで登場したRGランプや各種現出デッキに対してCFBが持ち込んだバントが一定の対策方法を示してしまったこともそれを支えている。
バントに勝とうとする黒コンはRGに圧倒的不利を強いられるしそのRGはUG現出系のデッキに苦戦するといったように、環境の多くのデッキには大きく苦手とするデッキが存在する。それにどうしてもエムラや現出デッキ同士の対戦はマナ加速と大型生物をいかに綺麗に引けるかの運ゲー先手ゲーになりがちだ。無論バントにも苦手なデッキも存在するが、メイン絶望レベルというような相性差のマッチがあるわけではなく、事前に意識してデッキを組めばトータル五分五分には持っていける場合がほとんど。
要はバント>アンチバント>アンチバントアンチ>バントという構図のメタゲームは一見極めて健全に見えるが、実のところバントだけが不利な度合いが小さいという不平等な3すくみなのだ。PT以降のGPでバントの入賞数が圧倒的に多いのは多くのプレイヤーがエムラ合戦を避けてバントを選択しているためと考えられる。それにミラーマッチに構築とプレイ技術の差が出やすいため腕に覚えのあるプレイヤーはなおさらバントを選択しやすい傾向にあるように思う。
(ついでに言うと先週末は赤青バーンというエムラデッキと低速コントロール絶対殺すマンが大流行したこともバントの躍進に繋がった可能性は高い。個人的にはバントは赤青には普通に有利な印象だ。)
【デッキ構成について】
①クリーチャー群
・《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter(SOI)》
《呪文捕らえ》の加入で3/3としての運用しやすさが増した。ただ中~低速デッキがイシュカナ等で早めに蓋をしにくるようになったため能力を使う機会は減。とはいえ他にシングルシンボル2マナでタフ2の優良生物はほぼ存在せず概ね4確枠だ。
・《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》
強さは環境のリリアナの数に大きく左右される。逆に非黒に対しては何枚引いても困らない強さ。
RGや《コジレックの帰還》のみをタッチした現出系デッキがTier1である以上メインサイド合わせて4枚採るべきだと考えてはいるが、サイドプランによってはあまり採用しない人もいるのは分からんでもない。
・《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》
なんやかんやで安定の高カードパワー。プレイスキルに自信がありロングゲーム向けのサイドチェンジを行うことが多いとなお強い。
逆に《無私の霊魂》を4枚採ってアグロに攻めるプランをメインに据えるとなるとジェイスを100%生かせているかは怪しいが、タフ2の2マナ域が《首絞め》くらいしか他にいないのでジェイス2枚程度の採用も已む無しかと思っている。メインとサイドに何枚ずつ入れるかはメタと好み。0~4までどれもあり得る。
・《首絞め/Noose Constrictor(EMN)》
サイドボード後にアグロ路線を強めるならリリアナデッキに対しサイドアウトしなくてもよいのはかなりの利点。環境初期はスピリットデッキが居たので強かった「到達」はもはや影が薄いのが少々残念だが。
ゆーて弱くも強くもなく、2枚以上の採用はあまりお勧めしない。
(なお自分のデッキには2枚入っている)
・《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist(SOI)》
《跳ねる混成体》を採用するならメイン採用も考えられるかな、くらい。
アグロに対するサイドとして《節くれ木のドライアド》とどちらを積むべきかは分からない。
都合よく盤面が止まったときは平和主義者のほうが強いがドライアドにもドロコマが効かないことやタップイン土地ハンドKPを肯定しやすいといった利点もある。(自分は首絞めを入れたのでどちらも非採用だったが)
・《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》
意外かもしれないがここはメインに鉄板4枚枠ではないと思っている。実はこのカードはバントのミラーマッチでは影が薄い。こいつが一生死なない展開は土地事故以外9割がた起こりえないしアヴァシンでしゃくられやすいのが地味に良くない。サイドに《悲劇的な傲慢》を採ると相性が悪いのにも注意。
とはいえ飛行クロックとしてだけでもそこそこ優秀な上、非黒の中低速デッキに対し《無私の霊魂》との組み合わせは強すぎる。サイド合わせれば結局フル投入するべきカード。
・《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》
最近はバントミラー以外ではアドバンテージよりクロックの速さを要求されるマッチも多く、メタ読みいかんでメイン採用数を減らするのは妥当。それでもこのカードはメタとか相性とかそういうすべてを超越した化け物カードなのでメインサイド合計は必ず4枚。いいか、必ず4枚だぞ。
・《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》
サイド合わせて2枚は確定でいい。欲を言えば3枚目も欲しい。
27枚目の土地があったほうがいいんじゃないのかってくらいバントCCはフラッドに強くスクリューに弱い。とはいえ実際土地を増やすわけにもいかないので中隊カウント減らないマナソースは最強。ついでにPWも付いてくるなんて頭おかしい。
・《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer(OGW)》
同系で強い。無限反射で簡単に勝てるのは勿論、相手の無私の霊魂+アヴァシン爆発コンボを押さえ込むこともできる。
ただ今環境のバントはアンタップインランドの枚数確保が重要だと思っているので運用するには少々マナベースが厳しい。また真価を発揮するには◇マナ源を2つ引く必要があるが、その難易度が少々高いとも感じたので自分は不採用に落ち着いた。(ロングゲームを志向すれば自然と◇マナは揃うがそれならそれで《悲劇的な傲慢》を採用するプランのほうが丸いかと思う。)
・《異端聖戦士、サリア/Thalia, Heretic Cathar(EMN)》
イマイチ何にどう強いのか分からないので不採用。このカードが強いときはそれが他のカードでも概ね優勢な場合が多い。コンバットを適切にプレイできれば最終的には普通のバントには不要になるカードと思っている。《コジレックの帰還》《焦熱の衝動》で100%死ぬのもよくない。
除去が少なめでイシュカナやアヴァシンを叩きつけてくるデッキが流行ることになれば採用を検討することはありそうだが白緑が激減した今はあえて採用する理由は弱い。
・《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》
マナベースに負担をかけるが2枚程度なら白マナ15でも採用できると感じている。
3枚目を入れるなら白マナは16欲しいかな。
オジュコマがそこまで採用されない&呪文捕らえを巡る攻防で強く、先週末の時点ではミラーではアヴァシン無双がかなり発生しやすかった。
黒コンには弱いが、PT以降白黒コンにアヴァシンが入ったため異界月以前よりは弱くなくなっている。対黒緑にも基本的にはイマイチではあるがメインに《衰滅》採用数が少ない昂揚型に対してはまずまず活躍できるし(それでも大体サイドで抜くけど)、現出系デッキにもまぁまぁ強い。
・《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》
アヴァシンとは若干違って同系でいつプレイしても強いわけではないものの、自分と相手が同数、3~5体くらいの生物をコントロールしている状況でワンパンで10点以上持ってくのでゲームプランが作りやすい。
RGやジャンドに対してコジリタ(裏)が放たれるであろう重要なターンを縛るだけで勝ててしまうし、エムラデッキにも明確に強く黒コンに対しても《殺害》以外ではインスタントで除去されずアヴァシンよりは概ね強い。
問題点は負けている盤面で引いた時何もしない場合が多々あること。それに青青が普通の構成だと出づらい。今のところアヴァシンのほうが好みなので入れるならサイドに1枚としたい。
②スペル
・《ドロモカの命令/Dromoka’s Command(DTK)》
このカードの枚数は決して固定ではない。というのもバント同系、黒コン、GB昂揚、UG現出系、RG昂揚と上位メタに対してドロコマがイマイチなシーンも多いためだ。
もちろん赤青バーンや白単など劇的に輝くマッチがある上に他のほとんどのマッチアップでも腐ることはほぼない。それでもやはりPT以前に比べて生物依存度が低いデッキや除去コンの総数は増えている。同系でも展開次第では有効な打ち所が少なくなりがちなドロコマは常にデッキに入れておきたいカードではない。
メインサイドに入れる枚数はきちんと考えを持って決めたい。GPリミニではポールリーツェルがメインドロコマ0のリストでTop8に入賞しているし、LSVもPTレポートの中で同じくドロコマ0のバントアップデート版について触れている。
・《オジュタイの命令/Ojutai’s Command(DTK)》
逆にこちらはPT以前より価値が上がった。イシュカナやアヴァシンといったデッキの天敵5マナ生物に強い。それに《老いたる深海鬼》や《約束された終末、エムラクール》も本体を打ち消すだけで大分被害は違ってくる。《無私の霊魂》を釣れるおかげで現出+コジリタを実質まとめて打ち消せる可能性があるのも素晴らしい。
昂揚系とランプに対しては文句無く強いが、白黒や黒緑コンに対しては先手キレカリタスに対応できないのには少し注意。後手でも入れっぱなしにするかは相手の構成を見ながら。
③サイドカード
定番カードに触れる必要はないと思うのでPT以降で評価が変わったカードを中心に少しだけ。サイドカードというカテゴリーだがメインに入りうるカードも多い。
・《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》
利点
色拘束緩くプレイしやすい
瞬発力がある
(トップデッキすると強い。にらみ合いから早く勝ちやすい)
押されている場でも多少場持ちする
(生物を採用しているミッドレンジ相手に裏目が少ない)
欠点
単体で何もしないことが多く平場に出ても効果が薄い
(衰滅に対して先手後手で効果が違いすぎる)
エムラに弱い(ギデオンなら勝てたのにぐぬぬって場合がある)
PT以前なら全般的にギデオンのが強かったと思うが、イシュカナ、カリタス、リンヴァーラといった中~大型生物が復権してきた現在では裏目が少ないのはタミヨウのほうだと思う。今のところ白黒コンや生物少な目の衰滅GBxコンなんかにはギデオンのほうが強く、《森の代言者》を採用するタイプのコントロール寄りミッドレンジ(GB/RG系)にはタミヨウのほうが強いという評価。
・《意思の激突/Clash of Wills(ORI)》
PTでチャネル勢が使ったバントに搭載されたのがバントCCで使われたのは初だろう。黒緑昂揚など他のトッププロが持ち込むデッキを知っていたからとはいえ、このカードをPTの時点できっちり採用していたのには感銘を受けた。
異界月以前は白緑に強い《否認》を厚く採る必要があったし生物で蓋をしてくる中速デッキもあまり存在しなかったためこんなカードを採用する必要はなかった。しかしPTを経て《衰滅》《悲劇的な傲慢》等の呪文とカリタスイシュカナアヴァシンといった生物を両面ケアできるカウンターの価値は飛躍的に上昇した。オジュコマのところで書いたようにタコとエムラ本体を打ち消せるのも大事。
それに赤緑ランプが直接のマナ加速を減らし昂揚のサポートカードを増やしたのもこのカードにとっては追い風になっている。キーカードを打ち消すためのXが重すぎて構えられないということは少なくなった。ロングゲームになれば腐るのは事実だが、それでも現環境ではこのカードのメリットのほうが大きいはず。
個人的に大好きなのでゲームデーでは3枚積んでいた。メタゲーム次第では4枚採用もあり得なくはないと思うくらい気に入っている。
・《即時却下/Summary Dismissal(EMN)》
逆にあまりこのカードは好きではない。ジェイス4枚やタコを採用するような青マナ源15~16のマナベースならともかく、平均的なバントのマナベース(青14)でこのカードを確実にプレイできるのは6T目以降でありエムラはともかく《老いたる深海鬼》に対して間に合う保証がない。
それに、現出生物(+コジリタ)に対してはなるべく現出の種を潰すことと、霊魂やオジュコマ意思の激突などを使うことで被害を抑えるプレイを心がければ対処できないことはない。エムラに対してはプレイされても追加ターンで殺しきれるアグロなゲーム展開を意識する。
コジレックリターンがあまりにも環境に溢れるとなれば4枚の無私の霊魂では足りなくなるだろうからそのときはマナベースの見直しとともに採用を検討することになるとは思う。
・《否認/Negate(OGW)》
もはや不要説あり。白黒や赤緑ランプには相変わらず強いものの相手側が生物をたくさん採用していたりすると裏目を引くことがある。白緑はほぼ居ない上にPWには飛行戦力で対処できないことはないため絶対に否認が必要なマッチアップは少ない。
・《石の宣告/Declaration in Stone(SOI)》
定番カードではあるが白単以外に積極的にサイドインしたいマッチアップがなくなったので抜いてしまった。なんやかんやでアグロ系ローグデッキ相手に安心感はあるので採用したい気持ちはあるが。
・《支配の天使/Subjugator Angel(EMN)》
これもチャネル発祥。目指すところが簡単なのが最高。
ただこれを使うプラン自体が《悲劇的な傲慢》や《老いたる深海鬼》に少々弱いという欠点もあり文句無く同系最強カードというわけではない。
これは想像なのだが、LSV達はPTの時点では自分達以外に勝ち上がってくるバントの数は少ないと読んでいたのではなかろうか。つまりあまり同系にサイドスロットは割きたくないという前提の下1枚で劇的な効果を得られるカードがこれだったから採用されていたのでは。今ならタコのほうが丸いと思う。
・《過去に学ぶ/Learn from the Past(DTK)》
スタンダートほぼ唯一の現実的な墓地対策だが費用対効果はイマイチな上そもそもイシュカナや現出生物のプレイ自体には何も関与しないため裏目が大きすぎる。ぶっちゃけ弱い。使わんほうがいい。
・《神聖なる月光/Hallowed Moonlight(ORI)》
同系対策としては機能しない。
カンパニーはほぼメインで打つしそうそう2マナ構えてられん。
《秘蔵の縫合体》デッキに劇的に刺さることはあるだろうが(縫合体を場に戻すのはマスト能力なので)、縫合体ギミックにバントはそこまで相性が悪いわけではないし、そもそも縫合体現出系デッキはそうそういつも綺麗に回るデッキじゃない。(なので自分では《秘蔵の縫合体》デッキは使いたくない。)
【一応レシピ】
・バントカンパニー(ゲームデー通算戦績10-2-1ID)
4《進化する未開地/Evolving Wilds(BFZ)》
4《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast(ORI)》
2《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》
3《大草原の川/Prairie Stream(BFZ)》
1《梢の眺望/Canopy Vista(BFZ)》
2《要塞化した村/Fortified Village(SOI)》
6《平地/Plains》
1《島/Island》
3《森/Forest》
(白16青14緑16)
4《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter(SOI)》
4《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》
2《首絞め/Noose Constrictor(EMN)》
3《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》
3《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》
4《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》
4《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》
1《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》
2《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》
4《集合した中隊/Collected Company(DTK)》
3《ドロモカの命令/Dromoka’s Command(DTK)》
Side
2《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》→1枚タコ?
1《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》
2《オジュタイの命令/Ojutai’s Command(DTK)》
3《意思の激突/Clash of Wills(ORI)》
1《否認/Negate(OGW)》→意思の激突かタミヨウにしそう
1《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》
1《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》
1《ドロモカの命令/Dromoka’s Command(DTK)》
1《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》
2《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(ORI)》
初日と二日目で細かく1~2枚変えてたが概ねこんな感じ。二日目はコントロール環境と事前に分かってたからメインのドロコマとアヴァシンを1枚ずつ《意思の激突》とオジュコマに差し替えとかしてもよかったかな。
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だがしかし、ここに書いてあることは先週末までの話。
今週末行われるRPTQでは恐らく再びのバントの海が予想されるため、また先週までとは違った構築が要求されるのは間違いない。出場されるみなさんの構築テクに期待。
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一応プレイマットと《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope(EMN)》の買い手は募集継続中。ただし異界月優勝マットはすでに売れました。
http://mizutamari2megusuri.diarynote.jp/201608152007371813/
リリアナ本体は誰か買ってくれないかな~?
町まで行けばショップがほぼ同額買取してくれるけど行くのめんどくさいのねん
コメント
バントカンパニーの勝率は参加者の勝率平均値を割りませんでしたからねえ・・・
「絶対バントに勝てるデッキ」はないですからね・・・。それに、ある程度バントを倒せるデッキが組めてもそれが環境で勝てるデッキになる保証がないのが辛いとこです。